北海道新幹線が、経営悪化が続くJR北海道の経営にとって重荷になりつつある。新函館北斗―札幌間の全線営業は2030年度末の予定となっていたが、同新幹線整備に関する有識者会議は3月、札幌延伸の開業目標について2038年度末に延期するとの報告書をまとめた。JR北海道は近年、業績悪化が続いており、24年3月期連結決算の営業利益は499億円の赤字であり、経営安定基金の運用益と国からの補助金などで経営を維持している。そうしたなか、12年に着工した北海道新幹線は、すでに営業している新青森駅―新函館北斗駅の乗車率が3割弱と低迷が続いており、線区別収支では大幅な赤字となっている。JR北海道は北海道新幹線をどのように経営改善、そして成長の糧にしていけばよいのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
開業が8年も後ろ倒しになる理由
まず、なぜ開業が8年も後ろ倒しになるのか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏はいう。
「北海道新幹線新函館北斗~札幌間の建設工事を担当している独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運気機構)は2025(令和7)年3月14日現在、新函館北斗~札幌間の開業時期を示すことができていません。国土交通省が設置した『北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の整備に関する有識者会議』では2038(令和20)年度末以降と示されたとのことで、つまり早くても2039(令和21)年春以降の開業となりそうです。
開業が遅れる理由として挙げられるのはトンネルの掘削に難航しているからです。新函館北斗~新八雲(仮称)間にある長さ約32.7kmの渡島トンネルと新小樽(仮称)~札幌駅間にある長さ約8.4kmの札幌トンネルとでは地質不良に悩まされて『想定を下回り難航』とされ、長万部~倶知安間にある長さ約9.7kmの要諦トンネルでは強固な岩の塊に阻まれて工事が停止中となっています。日本のトンネル掘削技術は世界一の水準ですが、それでも難工事となっており、いかに厳しい状況かがわかるでしょう。また、難工事には昨今の人手不足も追い打ちをかけていると見られます」
北海道新幹線の乗車率が低迷しているという指摘もなされているが、利用状況や路線の経営はどうなっているのか。
「北海道新幹線新青森~新函館北斗間の2023(令和5)年度の1日平均の利用者数は3828人で、西九州新幹線武雄温泉~長崎間の約6900人(2023年9月23日~2024年9月22日)を下回り、全国の新幹線のなかで最も少ない人数となっています。JR北海道は同年度の北海道新幹線の営業収支を117億円の赤字と公表しています。同年度の同社の鉄道事業における営業損失は599億円でしたから、北海道新幹線の営業損失は全体の19.5パーセントを占めており、多くを占めているといえます。ただし、北海道新幹線の営業費用には多額のコストを要する青函トンネルの維持費も含まれていると考えられ、利用者が少ないことが営業損失の最大の理由とはいえ、経営努力が足りないとは一概にはいえません」(同)