社会不安障害(SAD)は、人から注目される場面、失敗や恥をかくかもしれない場面に対し、強い不安を感じる疾患です。
SADを持つ人々は、そうした不安への一時的な対抗策として心理的な「安全行動」をよく取ります。
そうした背景の中、カナダ・マックマスター大学(Mac)による2022年研究で、他者との交流の中で「安全行動」を取る人は、誠実さや好感を抱かれにくく、結果的に相手に好かれないことが示されたのです。
では、心理的な「安全行動」とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
研究の詳細は2022年11月15日付で心理学雑誌『Behavioural and Cognitive Psychotherapy』に掲載されています。
目次
- 「安全行動」の具体的な行動例とは?
- 安全行動は好感度を下げてしまう可能性
「安全行動」の具体的な行動例とは?
アメリカ精神医学会(APA)によると、社会不安障害(SAD)は「他者から詮索される可能性のある社会的場面において、否定的に評価されることへ過度な不安を持つこと」と定義されています。
たとえば、人前でのスピーチや会食、電話での会話、他人の視線への恐怖です。
こうした場面でSADの人々は「失敗したらどうしよう」「嫌われたくない」「変なヤツだと思われたら」と不安を募らせてしまうのです。
そこでSADの人々は、こうした不安を事前に防ぐために心理的な「安全行動」を取ることがあります。
具体的な行動例としては、以下のものが挙げられます。
・話すことをカンペや紙に書き出し、事前にリハーサルする
・出来るだけ目立たないよう、人や物陰に隠れる
・相手と視線を合わせない
・自分からはほとんど話をしない
・食べる姿を見られたくないから人前では食べない
・余裕を持っているかのように振るまう

これらの安全行動により、一時的に不安を和らげたり、失敗を防いだりできますが、これが癖になると安全行動が止められなくなり、長期的には社会不安を長引かせる原因となってしまいます。