この技術の最大の利点は、まず速度超過が要因となる衝突事故を30%、死亡事故を約20%減少させる可能性があるということです。
また一定速度を維持することで燃費効率の向上やCO₂排出量の削減といった環境面のメリットも期待できます。
一方で、標識認識の誤動作やGNSS情報の誤差によって誤警告や誤作動が発生するリスクがあり、ドライバーが過度な介入と感じた場合にはシステムをオフにしてしまうおそれがあります。
既存車両への後付けに関する法整備が十分でない国や地域では普及に時間を要する可能性もあるでしょう。
それでも、このISAは近年、急速な広がりを見せています。
「制限速度を守らせるテクノロジー」がEUと米国に導入される
欧州連合(EU)では、2019年に定められた一般車両安全規則に基づき、2022年7月から新型式モデルの車両へISAの装備が義務付けられました。
さらに2024年7月にはすべての新車への拡大が実施され、市場に出る新車は事実上すべて速度管理機能を備える体制が整いました。
これらの規則では、ドライバーが必要に応じてISAシステムを解除できる機能の搭載を必須とし、安全性と利便性の調和を図っています。

一方、アメリカでもスピード違反者へのISAの搭載を認める法案が可決され始めています。
実際、バージニア州では2025年春に、時速100マイル(約160km)超の速度違反ドライバーを対象に、後付け可能なISA装置の装着を要求できる法案が可決されました。
この装置はアクセルペダルへの物理的な制限をかけ、速度超過を事実上不可能にするものです。
このような法案は、すべての車やドライバーへのISA導入を強制するものではなく、スピード違反者だけを対象とするため、人々には受け入れやすいかもしれません。
現在、カリフォルニア州やメリーランド州など他州でも同様の法案導入が検討されており、米国内での展開も加速しています。