毎月、数多くの新商品が投入され、テレビCMで見かけることも多いため、消費者からの認知度も高い山崎製パン「ランチパック」。携帯サンドイッチ市場では圧倒的なシェア1位となっているが、実は同市場で最初に商品を販売した“元祖”はフジパン(「スナックサンド」)であることは、あまり知られていない。「ランチパック」の発売は1984年であり、「スナックサンド」(1975年発売)の9年後だが、なぜ「ランチパック」は「スナックサンド」を抜き去ることができたのか。そして、フジパンは「ランチパック」への対抗策として、どのような戦略を描いているのか。同社への取材を交えて追ってみたい。
製パン業界2位のフジパングループ本社は、「本仕込食パン」「生ぶれっど」ブランドで知られる食パン、「ネオバターロール」「ロングスティック」などのロングセラーシリーズのほか、近年では「生くろわっさん」「生べーぐる」「生すなっくさんど」などパッケージに大きく「生」と書かれた商品で知られる老舗メーカー。創業は大正11年(設立は昭和26年)であり、昭和23年設立の山崎製パンより長い歴史を持つとされる。傘下のグループ企業を通じて、コンビニエンスストアや小売店向けの弁当・総菜製造、和洋菓子製造、スーパーやショッピングセンター内のパン製造・販売店舗の運営なども展開。24年6月期連結決算の売上高は3008億円、営業利益は79億円、従業員数1万4000人を超える大企業であり、業績も堅調だ。昨年1月には、原材料価格の上昇などを受けて幅広い領域で値上げが続くなか、従来の6個入りから5個入りに減量して販売していた「ネオレーズンバターロール」について、価格据え置きのまま再び6個入りに「増量」して話題を呼んでいた。
一方の山崎製パンは製パン業界で圧倒的な1位。「ダブルソフト」「薄皮シリーズ」「ナイススティック」「ホワイトデニッシュショコラ」「ミニスナックゴールド」など長寿シリーズを多数抱え、手掛ける商品は食パン、菓子パン、サンドイッチなどのパン類に加え、菓子類、飲料類など幅広い。このほか、コンビニエンスストア「デイリーヤマザキ」やベーカリーショップの運営なども行っている。そのため企業規模は大きい。24年12月期連結決算の売上高は1兆2445億円、営業利益は519億円、従業員数は1万9000人を超える。
市場シェアはランチパックが68.48%、スナックサンドが29.11%
そんな両者の主力商品が真っ向からぶつかり合うのが携帯サンドイッチ市場だ。力の入れ具合は新商品投入の頻度にも表れている。たとえば「ランチパック」は年間168種類(2024年)もの新商品が発売されており、今月だけでも「とろリッチ生(生クリーム入りメロンホイップ)」「コロッケとポテトサラダ(北海道産じゃがいも)」「デミメンチカツとボロネーゼ」「バターチキンカレー」「マンゴーオレンジ」「抹茶ティラミス風味」「じゃがいも入り焼きそば」「狭山茶入りクリーム&つぶあん」が発売。一方の「スナックサンド」も「オムそば」「ハンバーガー味」「てりやきバーガー味」「マンゴー杏仁」「黒糖スナックサンド あんこ餅」「たっぷりカスタード&ホイップ」「狭山茶クリーム&ホイップ」「アサイー&ヨーグルト」「平田牧場和風ポークカレー」「飛騨牛すき焼き&タマゴ」「たじみそ焼きそば」「瀬戸焼そば」「焼きとり風七味&マヨ」「すき焼き&タマゴ」「華味鳥と春キャベツサラダ」「ミルクセーキ味」が発売される。
携帯サンドイッチ市場における各社のシェアはどうなっているのか。フジパンは次のようにいう。
「2012年時点でのフジパンの市場シェアは0.5%程度でしたが、2012年頃にこのタイプのパンが 『携帯サンドイッチ』という総称で呼ばれるようになり、注目を集めてブームが再燃しました。直近のデータでは、ヤマザキ製パン(ランチパック)68.48%、フジパン(スナック サンド)29.11%、ロバパン※(スナックサンド)1.76%、日糧製パン(ラブラブサンド)0.65%となっています(データ参照元:日経POSデータ 期間:2024年3月1日~2025年2月28日) ※北海道エリアのスナックサンドの製造販売はグループ会社の株式会社ロバパンが行っています」
なぜ後発の山崎製パンはフジパンを追い抜くことができたのか。小売チェーン関係者はいう。
「両者ともに頻繁に新商品を投入しており、その点で大きな差はありません。やはり企業規模が大きく影響していると考えられます。売上高ベースで山崎製パンはフジパンの約4倍も規模が大きく、スーパーなどの小売店で、より多くの棚を取ることができるため、消費者へのリーチ度という面で有利になります。また、もちろんフジパンもスナックサンドの販売に力を入れてはいますが、例えば過去に山崎製パンは『ランチパック』の専門店を展開したり、現在でも積極的にテレビCMを展開したりと、会社として同商品に非常に力を入れているという要素も大きいのではないでしょうか」