バフェット氏の名声と地位と投資に対する感性が衰えなかったのは自分の富や名誉、周りからのちやほやや誘惑を断つことで維持したのだと思います。要は生活スタイルを変えないことが大事なのだと思います。アメリカでは成功者は一般庶民とどれだけ違いを出すかということを一つのテーゼにすることがあります。例えば今年秋に2年ぶりに参加する自己啓発コーチングで著名なトニー・ロビンス氏は自家用飛行機に乗る魅力がどれだけあるかを力説し、それを得た時、自分のビジネスがいかに飛躍してきたかを感じたものだ、と述べています。多分、ロビンス氏の考え方が典型的なアメリカンスタンダードなのだと思います。故に氏がコーチング業として財を成したとも言えます。
ところがバフェット氏にはそのような「イケイケどんどん」的な様子が窺えないのです。それはビル・ゲイツ氏も似ているかもしれません。私が90年代半ば、シアトルにある日本食レストランの副社長を兼任していた頃、脂が乗り切った当時のゲイツ氏が会社の仲間数人とやってきて、ごく普通の当時15㌦にも満たないランチ定食をほおばり食事をしながら仕事をするようなスタイルだったと報告を受けたのを鮮明な印象として持っています。
日本でも創業系の経営者は似ているところがあります。ニデックの創業者、永守重信氏も全くブレない人生です。昨年、永守氏が理事長を務める京都先端科学大学の学生をインターンでわが社に迎え入れ、私が作り上げたかなりユニークな2週間のインターンシッププログラムを終え、帰国後、その学生がインターンシップの成績優秀者の一人に選ばれ永守氏への報告会に招かれたそうです。永守氏はその報告を聞き終えた時、「そこの社長さんはいい車に乗っておるのやろうな」と言ったそうです。話の脈絡がわからないのでなぜ永守氏が私のことをそう思ったのかわかりませんが、もしもそのコメントにお応えできたなら「私は永守さんと同じでストイックな生活ですよ」と言いたいところでした。