臨死体験は一般ではスピリチュアルな経験であると考えられがちですが、実際には危機に陥った体が脳を再起動させるための生存努力なのかもしれません。

臨死体験の正体は死ぬ間際の「爆発的な脳活動」だった
臨死体験の正体は死ぬ間際の「爆発的な脳活動」だった / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

一方、今回の研究には避けられない弱みも存在します。

患者が全員死亡しているため、他の臨死体験の研究のように体験内容を聞き出すことができないからです。

そのため、患者の体験内容と脳の活性パターンがリンクしていたかを証言にもとづいて判断することはできません。

ですが今後、臨死体験の脳科学的な理解が進んでいけば、心停止後の隠れた脳活動を突き止め、人間の意識のメカニズムを解明する手助けになるでしょう。

また臨死体験の神経メカニズムが完璧に解明され、安全に体験できるような薬や神経制御デバイスが開発できれば、独特の体験を通して人々の意識改革ができるかもしれません。

最後に研究のために命を捧げてくれた4人の患者たちに、深い敬意と感謝を表明し結びとします。

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参考文献

Mysterious Surge of Activity Detected in The Brains of Dying People
https://www.sciencealert.com/mysterious-surge-of-activity-detected-in-the-brains-of-dying-people

元論文

Surge of neurophysiological coupling and connectivity of gamma oscillations in the dying human brain
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2216268120

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。