マツダの米国事業が躍進している。2024年度の米国市場での売上高は前期比約38%増の1兆8033億円で過去最高を更新。15年度と比較すると2倍以上となっている。だが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。2012年にフォードとの合弁工場の所有権を手放し現地生産から撤退、販売不振で2016年頃には米国市場から撤退するのではという外部からの見方もあった。そこから約10年、マツダはいかにして、米国事業を同社の主力市場と位置付けられるまでに再建・成長させることに成功できたのか。マツダに取材した。
今年に入り、マツダの技術に関するニュースが注目される機会が目立つ。3月には、独自のEV専用プラットフォームによるマツダ独自のバッテリーEVに加えて、エンジン「SKYACTIV-X」の後継機と位置付ける「SKYACTIV-Z」を組み合わせた独自のハイブリッド専用エンジンシステムを、今年中に投入が予定されている次期CX-5に27年から導入することを発表。ラムダワンでのスーパーリーンバーンを目指していることが業界的には注目された。
ブランド戦略の転換
そんなマツダの米国事業が伸びている。15年度には7700億円だった売上高は、23年度には1兆円を突破。前述の24年度も大幅な増収となった。ちなみに過去10年の北米販売の伸び率はトヨタ自動車や日産自動車を凌ぐ。一時は撤退も検討した米国市場で、現在では全社の営業利益のうち約5割を占めるまでに成長した大きな要因は何か。マツダに聞いた。
「マツダはブランド価値を意識した活動をグローバルで推進しています。米国はその筆頭であり、2012年からブランド戦略の転換を図りました。マツダはロードスターに代表されるようなスポーティなイメージだけでなく、お客様との絆が深いブランドへ、ブランド価値を大切にする量から質への転換を図っています。 過度な値引き競争から脱却し、顧客ニーズに応えた商品ラインナップを提供、お客様がマツダと関わる事で生きる歓びを感じられるよう販売店の意識を転換、商品と顧客体験の質を向上した結果利益率増に繋がりました。
たとえば、米国市場での消費者ニーズに応えるためSUVモデルのラインナップを強化し、ラージ商品群とマツダが呼ぶそれまでとは一回り大きい、米国のお客様ニーズにあったSUV、CX-70やCX-90を23年以降導入開始しました。この2車種は6気筒ガソリンエンジンに加え、プラグインハイブリッドモデルを設定しています。また、米国市場を主なマーケットとし、米国で生産するCX-50と合わせ、市場により適合したラインナップの拡充とブランド価値向上の取り組みが利益増加に寄与しました。 マツダの車種は米国道路安全保険協会(IIHS)から高い評価を受け、多くのモデルがトップセーフティピック+を獲得しました。これにより、消費者の信頼を得ることができた事も、ブランド価値向上へ貢献したと考えます」