世界有数のフィンテック経済国といわれるインド。「インドのシリコンバレー」と称されるバンガロールには、世界のIT大手企業が次々と支社を置くなど、華々しく成長を遂げている国の一つ。しかし、急速なIT化の裏でセキュリティ関連の課題が浮き彫りになっています。
そんなインドのセキュリティの課題に一石を投じようとしているのがPAY ROUTEの技術、RC-Authです。
今回は、株式会社PAY ROUTEの取締役副社長であり、PAY ROUTE INDIAの取締役である清水友大氏に、インドのフィンテック事情や、RC-Authに関するKadamba Intrac Private Limited・DMCバンクとの協業についてインタビュー。現地の空気を肌で感じた清水氏が語る、“インドのリアル”とは。
フィンテック経済国インドの意外な裏事情
——清水さんが実際にインドに出向いて、フィンテック分野の強さや日本との違いを実感したことはありますか?
インドで「日本にはない仕組みだな」と感じたのは、UPI(Unified Payments Interface)というものですね。これは、24時間365日、銀行口座間のリアルタイム送金が可能な決済システムです。インド政府が主導して開発したもので、スマートフォンで送金ができます。
個人間の送金に限らず、タクシー料金の支払いなども、個人の口座からタクシー会社の口座に対して瞬時に送金できるシステムです。インドではPhonePeやPaytm(PayPayサービス提供のもととなった技術を搭載したアプリ)というアプリを通じてUPIを使用している方が多いですね。実際、インドの街中で紙幣を目にする機会はほぼないと感じました。
——インドでキャッシュレスが進む要因はやはり、送金の手軽さなのでしょうか?
そういったことが要因でもあるのでしょうが、そもそもはインドの内情が関わっていると感じます。インドでは2016年に偽造紙幣などへの対策として、高額紙幣を廃止しました。この政策がキャッシュレス化の促進に影響したといわれていますね。インドは2023年にも2000ルピー札の流通停止を発表していますが、すでにキャッシュレス化が進んでいるため、影響はそこまで大きくないそうです。
同じく、インドでITやフィンテックが進んでいるといわれるのも、内情的な部分が大きいと感じますね。IT関連の仕事はカースト制度の階級に関係なく出世が望めることや、地理的にインドとアメリカとの時差がちょうど12時間のため、24時間稼働のために多くのアメリカのIT大手企業がインドに支社を置いていることが影響しているようです。ただ、いわゆる「インド発祥」で成長しているITやフィンテックのサービスが多いか? と訊かれると、私としてはやや懐疑的です。
——インドは世界でも有数のフィンテック経済国だと耳にしたのですが、実際に現地に足を運ぶと違った側面が見えるのですね。
もちろん、インドがフィンテック経済国であることは間違いないと思うのですが、基本的には海外企業の技術を使ったサービスがインドで広く利用されている、というイメージですね。これは、インドにGAFAMの支社が多く進出していることも、影響しているかもしれません。
しかし、インドのシリコンバレーと呼ばれているバンガロールでも、信号のない道路が多かったり、その道路も舗装されていない土埃の舞う道路だったりと、交通インフラをはじめとした基本的なインフラが整備されていないのですよね。
また、ローカルなシーンでは、フィンテックがうまく機能していないこともあります。UPIのシステムは、それを搭載しているUberなどの手数料が30%と高いこともあり、価格が安いリキシャ(インドの三輪タクシー)などでは利用を渋られることも多いです。