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全国規模での損失額は10億ユーロ以上

4月28日、スペインとポルトガル、そしてフランスの一部で大規模な停電が発生したことは、日本でも報道された。筆者は当日、バレンシア市内で日本人の友人女性二人と昼食を取る予定だった。停電は正午過ぎに発生した。

市内に向かうと、いつも利用しているパン・ケーキ店では、レジが停電で使えず、店員が電卓で会計を行っていた。重量で価格が決まる商品については、目分量で対応していた。

その後、バレンシア駅近くのリトルチャイナ街にあるレストランで合流する予定だったが、店内・厨房ともに暗く、レジも動かないため、営業は中止となっていた。

このリトルチャイナ街には現在、中華レストランやバル、美容院などが3つの通りを埋め尽くしており、レストランだけでも200軒近くあると見られる。半世紀前は、台湾人経営の店が1軒あっただけだった。どの店も営業できず、中国人従業員たちが通りに出て立ち話をしていた。人気のラーメン店も5〜6軒あるが、食事時には列ができるほど賑わうそれらの店も、この日は閑散としていた。

結局、レストランでの食事を諦め、筆者がクロワッサンを購入した店に戻り、通りに設置されたテーブルでテイクアウトのパエーリャを食べることにした。電気がないため電子レンジが使えず、温めないまま食べたが、意外と美味しかった。コーヒーマシンも使えず、提供不可とのことだった。

その後、筆者は40キロ離れた隣町の自宅へ、友人の一人の車で向かった。筆者が運転して駅の駐車場まで行き、自分の車をピックアップ。友人たちは再びバレンシアへ戻っていった。駅にはバレンシアから来た電車が停車していた。もし友人の車が使えなければ、家族の誰かに迎えに来てもらう必要があっただろう。なにしろ、タクシーを見つけるのは困難な状況だった。

今回の停電でスペインが被った損失額は、およそ10億ユーロとされている。しかし、正確な計測は困難で、20億ユーロに達するとの指摘もある。いずれにせよ、被害額は10億〜20億ユーロの範囲と見られている。スペインの日次GDPは41億ユーロとされており、今回の停電が経済に与えた影響は深刻である。