労働市場では「若さ」の価値が非常に高い。高学歴でなくても、スキルや経験がなくても、20代というだけで選択肢が広がる。若さというだけで、企業はポテンシャルに期待して採用する。筆者も派遣社員だったころは「ダメなら辞めて次に行けばいい」と思っていた。
だが、若さは永遠ではない。
年齢を重ねると、企業は一転して「実績・スキル・専門性」でその人を評価し始める。過去にどれだけ若さで許されてきたかは関係なく、実力主義の選別が始まるのだ。筆者は別に若者に説教したいわけではない。事実ベースでマーケットメカニズムを取り上げているに過ぎない。
「逃げ切り」戦略も難しい時代に
昔は、大手企業に就職してしまえば「転職しなくてもそのまま定年まで逃げ切れる」と言われていた。だが今では企業の寿命はどんどん短くなっている。10年続く会社すら少なくなり、赤字や不採算部門のリストラ、最悪の場合は倒産だって現実味を帯びてきた。
つまり、「とりあえず今の会社で静かにやり過ごしていればいい」と思っていても、環境が変わればその戦略ごと瓦解する。そして、備えていなければ「本当の意味での退職」を突きつけられることになる。
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静かな退職という考え方には、確かに現代的な背景もある。過剰労働や理不尽な職場文化にNOを突きつける手段でもあるだろう。だが、そこで思考停止してしまえば、キャリアも市場価値も、時間とともに静かにすり減っていく。若さは有限だ。そしてスキルは静かに磨かないと、静かに失われる。
「何もしない」という選択には、見えないコストがつきまとう。静かな退職が“成功”につながる時代では、もはやない。
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