●この記事のポイント
・楽天モバイルはスマホと通信衛星の直接通信に成功し、国内で初めてビデオ通話を実現したと発表
・KDDIがスマホでSpace Xのスターリンクを利用できる「au Starlink Direct」を開始したばかり
・自然災害が多く山岳地帯や離島が多い日本においては低軌道衛星を活用した通信サービスへのニーズが高まっている
楽天モバイルは今月23日、同社のスマートフォンと米AST SpaceMobileの通信衛星の直接通信に成功し、国内で初めてビデオ通話を実現したと発表。2026年第4四半期に商用サービスの提供を開始する計画を明らかにした。スマホと通信衛星の直接通信としては、今月、KDDIがスマホでSpace Xの「Starlink(スターリンク)」を利用できる「au Starlink Direct」を開始したばかり。KDDIの直接通信で利用できるのは、現状ではSMSなどのテキストメッセージの送受信、位置情報の共有、グーグルの生成AI「Gemini」による検索、緊急地震速報の受信など限定的で、夏以降にデータ通信に対応予定とされているが、楽天モバイルが一歩リードしているという見方もある。楽天モバイルの直接通信は、KDDIのそれとどう違うのか。また、そもそもなぜ同分野の開発に注力しているのか。楽天モバイルに取材した。

楽天モバイルが手掛ける携帯電話事業は勢いづいている。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が君臨する携帯業界に殴り込みをかけるかたちで、2020年にサービスを開始し、23年に投入した「Rakuten最強プラン」を契機として契約数増加のスピードが加速。24年には携帯事業の黒字化が目前に迫っていると宣言。今年2月には契約数が850万回線を突破し、昨年12月にはEBITDAベースで悲願の単月黒字化を達成した。
その楽天モバイルがさらなる成長に向けた策として取り組んでいるのが通信衛星とスマホの直接通信だ。同社は26年第4四半期に「Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile」の提供を開始することを目標にしている。
“高速インターネット通信”を目指すプロジェクトを推進
スマホと衛星の直接通信に取り組むに至った背景・目的について、楽天モバイルは次のように説明する。
「自然災害が多く山岳地帯や離島が多い日本においては、低軌道衛星を活用した通信サービスへのニーズが高まっています。低軌道衛星による通信サービスであれば、地上の状況に左右されることなく、携帯電話を利用できるようになります。2020年3月に締結した戦略的パートナーシップのもと、楽天モバイルは米AST SpaceMobileの低軌道衛星と市販されているスマートフォンによる直接“高速インターネット通信”(音声・ビデオ通話等)を目指すプロジェクトを推進しており、日本国内で26年第4四半期に『Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile』のサービス提供開始を目指しています」
どのような技術的な仕組みによって、実現されたのか。
「楽天モバイルとAST SpaceMobileは、25年4月に日本国内で初めて、低軌道衛星と市販スマートフォン同士のエンドツーエンドでの直接通信によるビデオ通話に成功しました。今回の試験では、福島県内に設置した楽天モバイルのゲートウェイ地球局から電波を『BlueBird Block 1』に向けて発信し、衛星を介して市販スマートフォンが受信しています。衛星と接続した福島県内のスマートフォンから通話アプリを使用して、東京都のスマートフォンへのビデオ通話を実現し、衛星と市販スマートフォンによる直接通信に成功しました」(同)
楽天モバイル様の契約者は、新たに何ができるようになるのか。
「『Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile』のサービス提供開始後には、市販のスマートフォンにて衛星との直接通信による“高速インターネット通信”がご利用可能となります」(同)
スマホと衛星の直接通信の利用には、現行の契約プランに追加料金が発生するのか。
「料金プランなどについては現時点では未定です」(同)