2日遅れとなったが、27日に実施されたウィーン市議会選挙の結果を報告する。第1党はルドヴィク市長(64)が率いる与党社会民主党(SPO)で得票率約39.4%で断トツ。それを追って極右政党「自由党」(FPO)で20.4%で前回(2020年)比でほぼ倍の得票率を獲得した。そのほか、「緑の党」14.5%、リベラル派政党「ネオス」10.00%、保守派政党「国民党」9.7%だった。投票率は約61.9%で前回比で下がった。

赤の砦を守ったウィーン市のルドヴィク市長、ウィーン市公式サイトから
ウィーン市議会は「赤の砦」と呼ばれ、終戦から現在まで社民党(前社会党)が第1党で統治してきた。ルドヴィク市長の社民党は前回比で2.24%得票率を落としたが、他の政党の追随を許さない強さがあった。選挙で得票率40%前後を獲得できる政党は今日、非常にまれだ。社会福祉政策、交通網、住居、治安状況で他の欧州の都市を凌いでいる。音楽の都として世界から多くの観光客を呼ぶ一方、ドナウ川沿線には国連都市を誘致するなどインタナショナルなインフラを完備し、ウィーン市は国際会議の開催地ナンバーワンを続けている。
問題点は難民・移民の殺到だ。ウィーン市はあと数年で200万都市になるが、人口増加の背景には移民・難民の増加がある。ウィーン市の公共学校ではイスラム系生徒の数がカトリック系生徒の数を上回っている。その結果、ドイツ語ができない生徒が増え、ひいては学力の低下がみられる。ウィーンのオーストリア人家庭では経済的に可能ならば、公共学校に子供を送らず、私立学校に通わせるケースが出てきている。
市の財政は赤字だが、観光業が順調に成長している限り、市の財政運営はまだ破綻することはない。ただ、新型コロナのパンデミックやウクライナ戦争の影響でエネルギー価格は急騰し、物価高を誘発して市民の生活は苦しくなってきている。そのような中、シリア人の難民家庭が月4000ユーロを超える支援を受けていることが報じられ、市民の中に社民党主導の難民政策への批判の声が聞かれる。