深海は地球上で最も過酷な環境のひとつです。
その中でも北西太平洋にある「マリアナ海溝」は、水深1万メートルを超える世界で最も深い海溝として知られます。
そして最近、中国科学アカデミー(CAS)らの研究で、マリアナ海溝に棲む深海魚は、まったく異なる時期に深海に進出していたにも関わらず、同じ遺伝子の突然変異を遂げていたことが判明したのです。
マリアナ海溝に棲みついた深海魚には一体何が起こっていたのでしょうか?
研究の詳細は2025年3月6日付で科学雑誌『Cell』に掲載されています。
目次
- 別々の時期に同じ「突然変異」をしていた
- マリアナ海溝にも汚染物質があった!
別々の時期に同じ「突然変異」をしていた
深海魚たちは、極端な水圧や低温、そしてほとんど完全な暗闇という環境で生きるために、独自の適応を遂げてきました。
たとえば、独特な骨格構造、変化した概日リズム(体内時計)、非常に微弱な光にも適応した視覚、あるいは視覚に頼らない感覚器官を発達させることで、過酷な環境に適応しているのです。
そんな中、研究チームは今回、深海に生息する11種類の魚類(カサゴ目やアシロ目、カサゴ目など)を対象にDNA分析を行い、極限環境下でどのように進化してきたかを理解しようとしました。
チームは有人潜水艇と遠隔操作探査機を使用し、太平洋のマリアナ海溝の水深1200〜7700メートルの範囲から生体サンプルを採取しています。
そしてDNA分析の結果、調査対象となった11種類の魚たちは、それぞれ異なる時期に深海環境へと進出していたことがわかりました。
最も早いものは白亜紀前期(約1億4500万年前)に深海へ進出し、他は古第三紀(6600万~2300万年前)、さらに新第三紀(2300万~260万年前)に到達した種もあったと推測されています。
