黒坂岳央です。

企業の広告は時に人の心を打つものがある。Citi社の広告もそのひとつだ。

Why do we spend our youth chasing money and, when we find it, spend our money chasing youth? (なぜ私たちは若い時代をお金を追いかけて過ごし、お金を得ると若さを追いかけてお金を使うのか?)

このシンプルな問いかけは、多くの人が見落としがちな「人生の逆説」を鋭く突いている。我々は常に「今ここにないもの」を欲しがる存在なのだ。

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若い頃はお金を求める

若い頃は誰しもお金を求める。自分も例外ではなく、むしろ人並み以上にお金がほしいと思っていた。

実家はずっとお金のことで揉めていた。氷河期世代、フリーターを長くやって遅れて大学を出たらちょうどリーマン・ショックの打撃で就職難。

氷河期世代として苦しい就職活動を経験し、ようやく社会に出た20代後半、自分の経済状況を人に話すのがどこか恥ずかしかった。ブランドロゴが大きく入ったバッグを買って見栄を張ったこともある。

実際の生活はそこまで苦しくもないのに、周囲から「お金がない」と思われることがカッコ悪いという間違った認識で自縄自縛になっていたのだ。

年を重ねると若さを求める

しかし、今は明らかに価値観が変わった。もちろんお金は大切だが、それ以上に家族との時間、健康、体力といった要素が遥かに優先されるようになった。

資産がある程度積み上がると、それは単なる「数字」に過ぎなくなる。極端な話、資産10億円が20億円になっても、日常生活の幸福度は何も変わらない。

承認欲求の奴隷になってお金の自慢なんてすれば、嫌われるか、もしくは自らを危険にするだけでしかない。年を取ってわざわざそんな愚かでバカげたことをやろうとは思わない。

そもそも、若い内に財産を築くことがすごいのである。ある程度年齢を重ねているなら、時間を味方に多少の経済的余裕があることは特段驚くことではないのだ。そんな人は探せば世の中にいくらでもいるわけで、周囲からも「羨ましい!」とは思われないだろう。