結果として、遠くの星や銀河の性質や進化の謎に迫る手がかりを得られるわけです。研究チームも、「実験室や天体プラズマで不可欠な高電荷イオンの構造を、一気にシンプルに見渡せるようになった」と述べています。

さらに注目すべきは、この新・周期表が私たちの暮らしにも大きな影響を与えうる点です。

冒頭でお話ししたように、高電荷イオンのある種のエネルギー遷移は、きわめて正確な「時計」になり得ます。

これによって、現在の最先端とされる光格子時計の精度をさらに高める道が開かれるかもしれません。

もし将来、その精度が桁違いに向上すれば、私たちが当たり前に使う「秒」という時間の単位自体が、まったく新しい定義に置き換わるかもしれないのです。

「原子核の陽子数」から「電子の数」へという大胆な発想の転換によって、プラズマ研究や天体観測、さらには究極の時間計測までもが大きく進化するかもしれません。

新しい周期表という視点が、これからの科学の歩みをさらに加速させていくでしょう。

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元論文

Periodic table for highly charged ions
https://doi.org/10.48550/arXiv.2504.11237

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部