さらに高電荷イオンは外界からの影響を受けにくい利点もあり、より正確で安定した時計の実現に期待が寄せられています。

今回提示された700超の候補からは、現在のストロンチウム光格子時計を凌ぐ究極の原子時計が誕生するかもしれません。

新しい周期表はプラズマ解析も宇宙観測も一気に扱える

新しい周期表はプラズマ解析も宇宙観測も一気に扱える
新しい周期表はプラズマ解析も宇宙観測も一気に扱える / Credit:Canva

今回提案された「新・周期表」がもたらす恩恵は、超精密な時間計測分野にとどまりません。

実は、整理された高電荷イオンのエネルギー状態一覧は、プラズマ物理や天体物理といった広い分野にも大きなインパクトを与えそうなのです。

私たちの身近な技術でいえば、核融合炉のような超高温のプラズマ環境があります。そこで扱われるプラズマ(イオンや電子が入り交じった状態)の中には、たくさんの高電荷イオンが存在するものの、そこから出る光やエネルギーの分析は複雑でした。

なぜなら、高電荷イオンは電子を多く失った結果、普通の原子とまったく違う“スペクトル”(出す光の波長)を示すため、どの線がどの元素に対応しているのか判別しにくかったのです。

しかし今回の新しい周期表を指針にすれば、「どの電子数系列に属しているか」を手掛かりに、複雑に見える光の輝線を素早く仕分けできるようになるかもしれません。

例えるならば、大きな倉庫に散らばっていた商品(スペクトル線)を、きちんとジャンルごとに並べ替えてラベリングし、どこに何があるか一目で見つかるようになったイメージです。

この恩恵はプラズマ研究だけにとどまりません。宇宙空間の星雲や銀河も、実は高温プラズマが豊富に存在する場所です。

望遠鏡で観測したときに、謎めいた光の線(スペクトル線)が見つかることがありますが、それがいったいどの元素由来なのか、あるいはどんなイオン状態なのか分からない場合が少なくありませんでした。

今回の研究による新・周期表を照合すれば、「これって実は電子数が○○のイオンなんじゃないか?」と推測しやすくなる可能性があります。