土の中では、私たちの目に見えないドラマが毎日繰り広げられています。
栄養が豊富な土では植物が元気に育ち、逆に有害物質があると作物はしおれてしまいます。
しかし、その土の”健康状態”をリアルタイムで知る手段は、これまで非常に限られていました。
そんな中、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは「土壌の状態に反応して光るバクテリア」という画期的な方法を開発したのです。
これは土の中の汚染物質などを検出するセンサーとして働くことが期待されています。
研究の詳細は2025年4月11日付で科学雑誌『Nature Biotechnology』に掲載されました。
目次
- 土の健康をどうやって「見える化」する?
- 土の物質に反応して「光るバクテリア」を開発
土の健康をどうやって「見える化」する?
農業において、土壌の状態を知ることは非常に重要です。
窒素やリンなどの栄養素の量、重金属や汚染物質の有無、これらはすべて作物の成長に直結します。
従来は土を採取して分析するか、高価なセンサーを設置するしかありませんでした。
しかし、これらの方法は手間がかかる上に、大規模な農地全体をリアルタイムで把握するには不向きでした。
そこで研究者たちは考えました。
「もし土の中に住むバクテリア自体がセンサーとなって働き、土の栄養状態に応じて目に見える信号を出してくれたらどうだろうか?」

しかも、それが遠くからでも確認できるなら、大規模な農地管理にも応用できます。
こうした方法は以前にも試されていますが、従来のバクテリアセンサーは蛍光タンパク質などを使うため、顕微鏡で観察しなければならず、遠距離での検出は困難でした。
この問題を乗り越えるため、MITの研究チームは新たなアイデアに挑戦しました。