精子にとっては、この液体の超螺旋的な”ひねり”が運動を強化し、精子に追随するように渦が収束していくことで、より効率よく泳ぐことを可能にしていたのです」

この運動の中心にあるのが、精子の鞭毛です。

ムチのようにしなりながら動くこの尾が、精子を前へと押し進めています。

鞭毛の動きによって周囲の体液に渦が生まれ、コルク抜きのようにねじれた流れが、精子の後ろや周囲に形成されていました。

精子の「3次元的な泳ぎ」の解明は世界初の成果

この研究は、精子の運動性に関する理解を大きく前進させるものです。

これまでの研究では、主に液体の表面近くでの精子の動きが調査されてきましたが、より詳しい鞭毛の動きと、それを取り巻く3次元的な流体の流れ場の両方を同時に可視化したのは、今回が世界初の成果だといいます。

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精子の周囲に発生する超螺旋構造/ Credit: Reza Nosrati et al., Cell Reports Physical Science(2025)

また今回の研究対象はヒトの精子でしたが、その知見は生殖分野を超えて、多くの分野に応用可能です。

この発見は、微生物学や流体力学の新たな研究領域を開くものでもあります。

たとえば、バクテリアのような“微小なスイマー”がどのように移動し、表面に付着するのかといったことを理解することで、感染の経路やバイオフィルム(細菌の集合体)形成の研究に貢献することが期待されます。

「こうしたビジュアル化によって、精子や他の微生物がどのようにさまざまな流体環境を進み、動いていくのか、流体力学的な理解が大きく深まるのです」とノスラティ氏は語っています。

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参考文献

Sperm don’t just swim, they screw their way forward
https://phys.org/news/2025-04-sperm-dont.html

Sperm use corkscrew-like fluid flows to screw through their path to fertilization
https://interestingengineering.com/health/sperm-use-cockscrew-movement-to-move-forward?group=test_a