ご存じのように、イルカやクジラは元々、陸上にいた哺乳類が海へ戻ったことで誕生した生物です。
その事実を知ると、遠い将来、クジラたちがまた地上へ戻り大地を歩く種に進化することもあるのだろうか? という疑問が湧いてきます。
この謎について、スイス・フリブール大学(University of Fribourg)は2023年に実際研究を行い、5000種以上の哺乳類を対象に、どれくらいの割合で水中適応の進化が起きているのか、また水中から再び地上に戻る可能性があるのかどうかを調査。
その結果、水中に完全に適応しているほど、陸に戻れる可能性はほぼ0%に近づくことが明らかになりました。
イルカやクジラが地上を歩き回ることはもうないかもしれません。
研究の詳細は、2023年7月12日付で科学雑誌『Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences』に掲載されています。
目次
- 水中に完全適応すると2度と陸に戻れない?
- なぜ水中適応は不可逆になるのか?
水中に完全適応すると2度と陸に戻れない?
研究チームは、現生種と絶滅種を含めた計5635種の哺乳類の進化データを分析しました。
このデータには、サイズ・運動能力・感覚器官・繁殖・食性・肺活量の変化が含まれています。
その結果、全体の実に96.7% (5449種)は完全な陸上生活のまま進化を続けていました。
対して、水中適応への進化を行ったのは全体のわずか3.3% (186種)にとどまっています。

さらに水中適応の程度の差に応じて、以下の3つのグループに分けられました。
1つ目はカモノハシやミズオポッサム、ミズトガリネズミのような半水生の哺乳類で、チームはこれを「A1」と表記しています。