ホスピタリティサービス事業とパートナーシップ事業
国立競技場にはスポーツの聖地という歴史があるが、JNSEは音楽イベントでも国立競技場を聖地にする方針だ。「アーティストのなかには、コンサートで全国各地のアリーナを巡回した後に、最後は国立競技場で開催したいという方もいる」(田中氏)という意向を汲み取って聖地へのブランディングを進める計画で、その手段のひとつが「グローバル型のビジネスモデル」の導入である。
従来は「貸館」と呼ばれるイベント利用の料金が大半を占め、これに飲食事業が付随していたが、JNSEは貸館と飲食に加えて、ネーミングライツなどパートナーシップ事業や15室だったVIP席を約70室に拡大する、ホスピタリティサービス事業も強化する。パートナーシップ事業は、例えばネーミングライツ、飲料の独占販売権、クレジットカードのサービスを案内するラウンジ開設など事業機会を付与する。ホスピタリティエリアでは知名度の高い一流の料理人が手がける料理を提供する。
売り上げ構成比は、一般来場者の飲食を含む貸館事業、パートナーシップ事業、ホスピタリティサービス事業を各30%、その他を10%と計画している。これまで国立競技場は赤字を公費で補てんしていたが、JNSEは、いわば“稼げるスタジアム”に転換して経済的自立を図っていく。
ベンチマークしているのは例えば米国カリフォルニア州イングルウッド市の「SoFiスタジアム」である。このスタジアムはNFLのロサンゼルス・チャージャーズとロサンゼルス・ラムズの本拠地で、屋根中央に「Infinity Screen」と呼ばれる帯状の360度4K大型ビジョンが吊り下げられている。28年開催のロサンゼルス五輪の開会式会場にも予定されている。