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地球温暖化の原因は大気中のCO2の増加であるといわれている。CO2が地表から放射される赤外線を吸収すると、赤外線のエネルギーがCO2の振動エネルギーに変換され、大気のエネルギーが増えるので、大気の温度は上がるといわれている。
しかし、これは本当に正しいのだろうか。物理化学の基礎知識を使って、もう一度、原点にもどって考えてみよう※)。
気体の温度は固体の温度とは違うのか?
固体の温度は、それらを構成する分子や原子などの粒子間の熱振動(振動エネルギー)の大きさを反映する。固体に温度計を接触させて、粒子間の振動エネルギーの大きさから温度を測ることができる。また、固体からは振動エネルギーの量に応じて赤外線が放射されるので、非接触型温度計で赤外線の量を測定して、温度を測ることもできる。
一方、気体の温度は、気体を構成する分子や原子などの粒子が空間を移動するエネルギー(並進エネルギー)を反映する。気体の中に温度計を入れて、温度計に衝突する粒子の並進エネルギーの大きさから温度を測ることができる。しかし、気体は赤外線をほとんど放射しないので、固体と異なり、非接触型温度計で温度を測ることはできない。
大気分子の並進エネルギーの大きさは何で決められるのか?
大気分子(N2、O2など)は常に地表との衝突を繰り返し、熱平衡状態になっている。昼間には、大気分子は大気よりも温度の高い地表からエネルギーを受け取り、並進エネルギーが増えて大気の温度は上がり、夜間には、大気分子は大気よりも温度の低い地表へ並進エネルギーを渡し、並進エネルギーが減って大気の温度は下がる。
大気分子の並進エネルギーは地表の温度で決められ、大気と地表とのエネルギーバランスのおかげで、昼間はそれほど暑くはなく、夜間はそれほど寒くはない。もしも大気がなければ、月の表面のように、昼間には110 ℃の高温になり、夜間には-170 ℃の低温になってしまう。