その一方で、日本は米国からの化石燃料輸入を増やすとよい。
いま、日本の化石燃料輸入代金は年間27.4兆円に上る※3)。だがこのうち米国からの輸入は年間1.4兆円にすぎない※4)。
米国は歴史的にはあまり化石燃料を輸出してこなかった。だが近年、シェール技術の長足の進歩によって石油・ガス生産が急激に伸びてきた。トランプ政権は石炭生産の復活も掲げている。米国は世界一の石油・ガス生産国であり、石炭埋蔵量も世界一である。
この米国からの化石燃料輸入を増やすことで、日本は貿易黒字を大幅に減らす可能性がある。もちろん価格などの条件は逐一真剣に交渉しなければならない。よく取りざたされているアラスカのLNG開発が本当によい選択肢なのかどうかも個別の検討が必要だ。
そして経済性だけでなく、米国からのエネルギー輸入は、日本のエネルギー安全保障にとって望ましいという側面が重要だ。
資源の乏しい日本は、ほぼ化石燃料を全量、海外から輸入している。唯一の同盟国であり、強大な軍事力を持つ米国から一定のエネルギー輸入をしておくことは、台湾有事など、いざというときのエネルギー安全保障におおいに寄与する。米国は自国の国益も関わっているとなれば海軍を護衛に付けてでも日本にエネルギーを届けるだろう。
日本の化石燃料輸入代金27.4兆円のうち、例えば5分の1を米国からの輸入にあてれば、それだけで年間5.5兆円になる。現在の1.4兆円から4.1兆円の増である。これだけで日本の貿易黒字9兆円をほぼ半減する。
だがこれには、現行の日本政府のエネルギー基本計画が邪魔になる。同計画では、現在は全発電量の1割に過ぎない太陽光発電と風力発電の合計を、2040年には3割から4割に増やすとしている。もしこれを本当に実施すれば、その分、LNGなどの消費が減ることになり、米国産の化石燃料輸入の余地も少なくなる。
日本は中国にお金を垂れ流すGXを止め、米国からの化石燃料輸入に舵をきるべきである。これによって、対米黒字削減を、国益に適う形で実現することができる。