連立協定で合意が実現し、これからは新政権が発足してリセッション下にある国民経済を復興させ、移民対策を強化するなどの課題に取り組んでいこうという時、次期首相に就任予定のメルツ党首を主導とした新政権に国民の期待が膨れあがってもいいところだが、まだ新政権も発足していない段階で、次期与党のCDU/CSUの支持率が伸び悩み、AfDが国民の間でますます浸透してきているのだ。

Forsaの調査によると、AfDを支持する国民は現政府や現状への抗議票としてAfDを支持しているのではなくなってきたという。35%の支持者は「AfDの政治信条を支持している」と答えているのだ。

AfDの思想的指導者ヘッケ氏は、ホロコーストやナチス時代の罪を軽視または否定する歴史修正主義者であり、極右思想の中核にある「民族的純粋性」や「国家主義」に通じる思想の持主だ。若者の間でAfDの支持者が増えている。

AfDの躍進について、ドイツ中央ユダヤ人評議会のヨーゼフ・シュスター会長は「ドイツで益々多くの人々が政治的信念からAfDを選んでおり、極右イデオロギーが顕在化している」と指摘、多くの有権者が現政権への抗議票、不満票としてAfDを支持しているのではなく、意識的に極右勢力を支持していることに強い警戒心を持っている。

AfDの支持拡大は、ドイツ社会における分断の象徴でもある。移民や難民、グローバリゼーションに対する不安が、社会の一部で過激な形で表現されてきたといえる。その結果、少数派や移民、ユダヤ人コミュニティーに対する攻撃が増加し、社会全体に深刻な影響を及ぼしてきた。

来月6日ごろにはメルツ党首を主導としたCDU/CSUとSPDの連立政権が発足する予定だが、移民対策と国民経済の活性化で迅速に成果を上げることができないようだと、AfDがさらに国民の支持を得て大きな政治勢力となり、メルツ新政権の政治運営を脅かすかもしれない。