この期間はおよそ2000年続き、最も磁場が弱まったピーク時には、地上に降り注ぐ紫外線や宇宙線の量が大幅に増加していたと考えられます。

そして最新の3D磁気圏モデル解析によると、この時期のオーロラは現在よりもはるかに広範囲に出現しており、北アフリカやオーストラリアにまで達していた可能性があります。

この現象はつまり、それだけ強い宇宙線が低緯度まで届いていたことを意味するのです。

ネアンデルタール人は「日焼け」で絶滅した?

この過酷な時代に、2種のヒト属がヨーロッパで共存していました。

一方はホモ・サピエンス(現生人類)、もう一方はネアンデルタール人です。

しかし約4万年前、ネアンデルタール人は突然姿を消しました。

その原因は完全に解明されていませんでしたが、今回の調査から、急激に強まった紫外線に対応できなかったことが大きな要因だった可能性が浮上しています。

実はホモ・サピエンスは、ちょうどこの時期から「仕立てられた衣服」を作り始めていたことがわかっています。

これにより肌の露出を避けて、紫外線から身を守ることができるようになりました。

さらに彼らは「オーカー(黄土)」と呼ばれる鉄を含む赤い顔料を肌に塗る習慣を発明したことが知られています。

近年の研究では、このオーカーに紫外線を遮る効果があることが実験的に示されており、現生人類は「服」と「日焼け止め」のダブルで紫外線から身を守ることができたと考えられるのです。

画像
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

対してネアンデルタール人は、単純な布を巻き付けるような簡素な衣服しか持っておらず、加えて、日焼け止めのような対策も行っていませんでした。

その結果、紫外線による皮膚がん、視力障害、葉酸(ビタミンBの一種)の欠乏による出生異常など、健康被害が多発し、集団維持が困難になった可能性があるのです。