それらの情報は説得力があるが、決定打ではない。状況証拠だ。欠けている点は関係者の証言だ。具体的には中国人ウイルス学者、「コウモリの女」と呼ばれている新型コロナウイルス研究の第一人者、WIVの石正麗氏らの証言だ。もちろん、中国共産党政権は彼らに証言させないだろうから、現時点では発生源を断言することは難しい。換言すれば、新型コロナのパンデミックの責任は事実を隠蔽する中国共産党政権にあるといえるわけだ。

BNDが2020年に入手したWIV関連の機密情報の存在について明らかにした時、中国外務省の報道局長・毛寧氏は北京で、「新型コロナウイルスに関する問題で、中国はいかなる形の政治的操作も断固として拒否する」と強調し、BNDのWIV流出説を一蹴している。

発生源の調査は問題の政治化ではなく、科学的事実調査だ。中国側は人権蹂躙問題を追及されると直ぐに「内政干渉」と言い逃れるように、新型コロナ感染の発生源問題の追及についても「問題を政治化する試みだ」と言って煙に巻く。

中国共産党政権が忘れてならない点は、新型コロナウイルスのパンデミックで世界で700万人以上が死に、数億人の感染者が発生し、多くは今なおその影響で苦しんでいるという事実だ。

調査ジャーナリストとして著名なシャリー・マークソン女史(Sharri Markson)は、「中国共産党政権は世界の覇権を握るために世界のグローバル化を巧みに利用し、最新の科学技術、情報を手に入れてきた。武漢ウイルスはそのグローバル化の恩恵を受けて誕生してきたのだ」と述べている。

例えば、ウイルスの機能獲得研究、遺伝子操作の痕跡排除技術は、米ノースカロライナ大学のラルフ・バリック教授、そして英国人動物学者で米国の非営利組織(NPO)エコ・ヘルス・アライアンス会長のペーター・ダザック氏らとの共同研究を通じてWIVの石正麗氏が獲得していった内容だ。ダザック氏らは米国の税金でWIVのコウモリ研究を支援してきた。その意味で、米国の科学者の落ち度も追及されなければならない。