このような「97%合意」言説に対し、異を唱えてきたのがオランダに拠点を置く独立系の科学者団体CLINTEL(Climate Intelligence Foundation)である。CLINTELは、「気候非常事態は存在しない」という声明(WCD)を掲げ、科学的データと理論に基づいた気候観を提示している。

WCD:World Climate Declaration There is no climate emergency

CLINTELの大きな特徴は、WCDに署名した科学者や専門家が実名と肩書きを公表している点で、2025年現在、世界中で1983人の科学者・技術者・政策決定者が名を連ねており、その専門分野も気象学、物理学、工学、地質学、統計学など多岐にわたっている。

彼らは「気候は複雑な自然現象であり、CO2のみを主因とする見方は不正確である」と主張し、現在の急進的な気候政策は拙速かつ不均衡であると警告している。

どちらの主張が信頼できるのか?

ここで重要なのは、「どちらが正しいか」を決めつけることではない。むしろ、「どちらの姿勢が科学として信頼に足るか」を問うことが本質だといえる。

科学とは本来、仮説と検証、反証を繰り返す自己修正的な営みであり、異なる見解を封じるのではなく、公開された場で議論を重ねることによって真理に近づいていくプロセスが重要である。

その意味で、CLINTELのように実名と専門分野を明示し、反証可能な形で主張を公にする姿勢は、科学の本質に忠実な行動と言えよう。これに対し、「97%の科学者(の一団)が合意している」という数字を用いて異論を封じる態度は、科学というよりも政治的同調圧力や信念体系に近いものになってしまう危険がある。

気候変動が「疑似科学」になりやすいポイント

気候変動を巡る議論では、「科学的である」とされる主張の中にも、真正な科学に基づくものと、疑似科学的な次のような特徴を持つものが混在している。