●この記事のポイント
・テスラやエヌビディア、アップルなど、世界的に成功している企業のなかにはマイクロマネジメントを導入しているところも少なくないといわれている。
・上司が部下に対して細かく管理をする過干渉型のマネジメントスタイル
・能力が平均以下の部下が多い職場でも、平均的ないしはそれ以上の成果を上げることができる
フレックスタイム制やリモートワークなど自由な労働形態が当たり前になった現在、イーロン・マスクが率いる米テスラやジェンスン・フアンが率いる米NVIDIA(エヌビディア)、故スティーブ・ジョブズが創業した米アップルなど、世界的に成功している企業のなかには、社員の行動を細かく管理するマイクロマネジメントを導入しているところも少なくないといわれている。成功する企業は、大なり小なり経営にマイクロマネジメントの要素を導入しているものなのか。また、マイクロマネジメントのメリットとデメリットとは何か。専門家の見解を交えて追ってみたい。
「マイクロマネジメントとは、上司が部下に対して細かく管理をする過干渉型のマネジメントスタイルを指します。典型的なやり方として、業務の進捗について細かく報告を求める、作成した書類について細かく修正点を指摘する、ミスが発生した場合に原因や背景などを細かく確認するといったやり方になります。これは、マネジメントとしては一定の成果が出せる一方で、パワハラにつながるなど批判的な評価も多いマネジメント手法です。
これに対比されるかたちで、マクロマネジメントという手法があります。部下に対して大きな方向性を示したうえで、そこにどう到達するかは部下の自主性に任せます。部下のモチベーションを高めることにつながり、より大きな成果が出せるという評価があります。流行としては、マイクロマネジメントからマクロマネジメントへと経営スタイルの変化が起きているといわれています」
マイクロマネジメントの最大のメリット
こう説明するのは、経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏だ。マイクロマネジメントのメリット、デメリットとは何か。
「まず、経営スタイルとして世の中の評価が高いマクロマネジメントにも欠点があります。マクロマネジメントが成立するためには、部下の能力が高く、かつモチベーションも高いという理想的な環境でのみうまくいくという、現実的には成立条件が限られたマネジメント手法なのです。これに対してマイクロマネジメントは、能力が平均以下の部下が多い職場でも、平均的ないしはそれ以上の成果を上げることができることが最大のメリットです。要するに普通の職場で有能な上司が成果を上げようとする場合、マイクロマネジメントのスタイルをとったほうが業績は上がります。
その際、周囲から見てパワハラだと思われたり、部下が萎縮したり、心的な傷を負って長期職場を離脱する社員が出てしまうのがリスクでありデメリットです。実際にはマイクロマネジメントで成果を上げている企業の多くの職場では、パワハラに苦しむ部下が存在する状況になっているようです。例外的にマイクロマネジメントと部下のモチベーション向上を両立させている人もいます。そういった上司は、このリスクをうまく回避するかたちでのコミュニケーションを得意としています。コミュニケーションを密にしながら、それぞれの部下たちがどう活動をしているのかを正確に把握し、部下のモチベーションを下げないような話し方で行動の変化を促すやり方です。ただし、こういった技を持った上司がたくさんいる企業はそれほど多くはありません」