第一次トランプ政権の時、安倍・元首相が米国からF35戦闘機を105機、購入すると約束し、トランプ氏のご機嫌をとりました。石破首相も同じことをするような気がします。「関税問題を含め、日本は毅然とした態度を取るべきだ」という声は正しくても、毅然としていれば、日本はトランプ氏の無茶な要求を跳ね返せるのかどうか。言葉だけの「毅然」なら、虚しさを感じます。
トランプ氏は持論である円安批判はしなかったそうです。近く行われるベッセント財務長官と加藤財務相との会談で、為替問題を持ち出すのでしょう。日本側は円安誘導はしていないと、一貫して主張してきました。異次元金融緩和は脱デフレのためであり、意図的な円安誘導はしていないとの説明です。
それは虚偽に近い説明でした。アベノミクスの当初のスローガンは「2年、2%の物価上昇、通貨供給量2倍」で、つまり2年で2%の消費者物価上昇を実現し、デフレを脱却するとの公約でした。いつまでたっても、実現はせず、アベノミクスは次第に「円安、財政ファイナンス(国債購入)」が本当の目的になっていったというのが反アベノミクス派の通説です。そうだと思います。円安で輸入物価が上がり、国内物価にも波及し、税収も増えることで、政府、日銀は「しめしめ」となったのです。
2016-19年はの円相場は1㌦=105ー110円、22年10月には148円、23年10月には150円と円は下落しました。日米金利差によるもので、ゼロ金利に近い円資金を借りて、高金利のドルに投資(円キャリー・トレード)すれば儲かる。その過程で円を売れば円安が進む。物価も上がる。税収も増える。
円安を米側が突いてくれば、日本側は逃げようがありません。すでに円は140円程度まで切りあがり、130円台を予想する向きもあります。もっとも将来、関税引き上げで米国の物価が上昇すれば、円高も止まるかもしれません。独裁政権のトランプ氏は早くも「パウエルFRB議長を一刻も早く解任すべきだ」と発言しています。政治が中央銀行に口出すると、どういうことになるのか。日本がそのモデルです。