これに伴い、農村の菜園や庭畑も維持されなくなり、村全体としての共同性と協同性も消失しました。
また、従来の農村では農閑期には祭りが存在し、多くの農民が祭りに参加していました。
しかし農業労働者が土地と切り離され、農閑期に農業労働者は解雇されるようになったので、これらの祭りも消滅しました。
食文化の継承は、土地と結びついた料理が、年間を通じて非日常の宴が訪れる環境で養成されていくものです。
祭りの消滅は、季節に合わせた料理を、土地特有の食材を用いて、多彩な調理法で食べるという習慣を奪ってしまいます。
そのため地域の食材の採取が制限されたり、祭りが消滅すると食文化は後世へ伝わらなくなってしまうのです。
また料理はすぐに消費され残り物は捨てられるため、工芸品のような職人技術と異なり後世に作品が形としては残らない点も食文化の継承を難しくする要因です。
これは音楽についても似た傾向がありますが、楽器と楽譜は結びつきが強く再現が容易ですが、料理のレシピはそれだけでは伝わらないニュアンスが多く再現が難しくなります。
これは私たちが、ネットで料理の作り方を調べた場合でも思い当たる問題でしょう。現在は動画もあるので一概には言えませんが、基本的に料理は人間関係を通じてでなければ上手く継承されないのです。
これにより料理の技術と伝統的なレシピが失われ、イギリス料理は衰退することになったのです。
かつてのイギリス料理は美味しかった?

余談ですが農業革命以前のイギリス料理は現在のイギリス料理よりもレパートリーが豊かであり、狩猟で手に入れていた鳥獣、野山で採取される果物、菜園で育てられる香草・豆類などが使われていました。
これらの食材は共有地となっていた野山や菜園で採取されて、季節によって供給が変動しました。