宇宙が描く無数の円盤のなかで、たった一つ、きれいに交差する“十字路”が見つかりました。
イギリスのバーミンガム大学(UoB)で行われた研究により、若い褐色矮星ペア〈2M1510 AB〉が作る楕円軌道を、惑星が直交するのコースで周回している可能性が示されました。
褐色矮星どうしが寄り添う連星もレア、極軌道を描く惑星もレア、そして両方そろった今回のケースはまさに 宇宙レア度2乗です。
しかしいったいなぜ星になり損ねた小さな双子の周囲を “十字飛行” の惑星が走ることになったのでしょうか?
研究内容の詳細は2025年4月16日に『Science Advances』にて発表されました。
目次
- 褐色矮星の2連星の動きに奇妙な歪み
- 褐色矮星の2連星もレア、直交軌道の惑星もレア
褐色矮星の2連星の動きに奇妙な歪み

星はガス雲が自らの重力でつぶれるときに誕生しますが、その雲にわずかなゆがみや渦があると、中心は一つではなく二つに「裂け」ることがあります。
こうして生まれた双子の原始星は、お互いをぐるぐる回りながら成長し、やがて連星となります。
連星の公転がほぼ円なら、周囲のガス円盤は平らに広がって惑星が同じ平面を回りやすいのですが、角運動量が追加で流れ込むと楕円軌道に引き伸ばされます。
楕円になると連星からの重力の凹凸が大きくなり、同じ平面の軌道はコブだらけになって安定を失います。
一方、連星の近日点を指す離心率ベクトルに対して垂直な方向には、時間平均で重力ポテンシャルが滑らかになる“安定ポケット”が生じると数値計算で示されています。
そこへ連星のトルクにあおられ円盤が“起き上がり”、最終的に90°の極軌道で惑星が固定されるのです。