本稿では、故・石原慎太郎氏と猪瀬直樹氏(各々以下敬称略)について、大気汚染問題を軸に論じる。
石原慎太郎氏は東京の空気を強いリーダーシップで清浄化を実行したが、猪瀬直樹氏は都心の自宅で加熱式煙草を吸いながら暖炉を使用しているという実に対極的で興味深い話題である。
※ 筆者は猪瀬氏の仕事の仕方についてはリスペクトしており、猪瀬氏を毀損する意味ではなく炭素中立を理由に都心や住宅地域における暖炉や薪ストーブ使用の是非について諸氏に考えて欲しいために本稿を記したことを注記しておく。
対照的な元知事たち
元東京都知事の石原慎太郎氏は、東京の大気汚染を解決するためにディーゼル車の排ガス問題を解決し、東京の大気汚染事情は劇的に改善した。
しかし、その後に東京都知事に就任し、政治資金問題で辞任した猪瀬直樹氏は、炭素中立を理由に都心の自宅で暖炉を使用していることが氏自身のインタビュー記事等で知られたことは記憶に新しい。 暖炉や薪ストーブは既に欧米諸国で大気汚染源として問題化し、Biomass燃焼は炭素中立にも貢献せず森林破壊にもつながり、気候変動問題にも悪影響があると指摘(その為にEUはBiomassをGreenEnergyから除外)されているが、この2名の元東京都知事の、空気質(AirQuality)に対する意識に着目し、その行動の正反対な価値観について概説する。
なお、石原慎太郎氏は嫌煙者、猪瀬直樹氏については喫煙者であることも考慮すべき点である。
石原慎太郎の環境政策
石原慎太郎氏はディーゼル車の排ガス問題を解決し、東京の大気汚染を劇的に改善した。
石原慎太郎氏は1999年から2012年まで東京都知事を務め、ディーゼル車の排ガスが東京の大気汚染の主要な原因であることを認識した。
彼は「ディーゼル車ゼロ作戦」を開始し、2001年には厳格な排出基準を設け、旧式ディーゼル車にフィルターの装着を義務付けた。これによりPM2.5濃度は2001年から2011年までに55%減少した。