トランプ政権の関税政策の目的
関税収入を使って減税を可能にし、中間層を支援。 製造業の国内回帰(リショアリング)を促進し、経済の再工業化を目指す。 「経済安全保障=国家安全保障」との認識から、サプライチェーンを国内に戻す。
中間層と地域格差の是正
経済の金融化で、東海岸(金融)と西海岸(IT)は繁栄したが、中西部の製造業は没落した。 「チャイナ・ショック」による中西部の衰退を取り戻すことが政策の核心。 「ウォール街はもう十分稼いだ。今度はメインストリート(実体経済)の番」。
財政政策との関係
財政赤字も大きい。政府債務はGDPの123%で、限界に来ている。 トランプ政権は関税収入を活用して、チップ、社会保障、残業に対する税金の廃止などを検討。 関税は年間3,000億~6,000億ドルの収入を見込む。
つまり関税とドル安誘導で為替相場をコントロールし、初期のブレトン・ウッズ体制のようにアメリカが通貨を管理する制度に戻そうというのだ。これをクルーグマンは一笑に付している。
■ アメリカが築いた国際経済秩序の崩壊
第二次世界大戦後、アメリカは貿易ルールや透明性を重視した体制を構築。 「相互貿易協定法」(1934年)により、関税引き下げと国際協調を進めてきた。 その体制がトランプ政権により混乱状態に。関税が日ごとに変更されるなど、企業が計画を立てられない。
■ ドルの過大評価は大した問題ではない
1930年代の「スムート・ホーリー法」以来の最悪水準。近年のアメリカとEU間の平均関税率はほぼゼロに近かったが、それを壊している。 ドルの「基軸通貨」としての優位性は、経済的には大きくない。その過大評価も大した問題ではなく、アメリカ人が英語とドルで貿易できる利益のほうが大きい。 製造業の空洞化は為替レートではなく比較優位によるもので、為替レートを操作しても製造業は戻ってこない。ドイツでも空洞化は進んでいる。
■ 「再工業化」はナンセンス
モノの貿易赤字は大した問題ではない。国際資本移動や情報プラットフォーム(サービス収支)が重要。アメリカのサービス収支は世界最大の黒字だ。 関税には空洞化を巻き戻す効果はなく、ドル安を人為的に維持することも困難。 ベッセントも再工業化なんてできるとは思っていないが、関税の好きなトランプに迎合して権力をふるっているだけ。 しかし関税実施後の金利上昇にはあわてて、トランプにストップをかけた。彼は金利が下がると予言していたからだ。