欧州では英国とフランスが既に同様の巡行ミサイルをウクライナに供与しているが、英国の「ストームシャドウ」とフランスの「スカルプ」と呼ばれる巡行ミサイルはタウルスより精度が低く、射程距離も大幅に短い。タウルスの射程距離は500キロだ。

退任するSPD首相オーラフ・ショルツ氏は、タウルスの納入がドイツを戦争に引きずり込む恐れがあると懸念し、ウクライナやフランスから供与への圧力があった時も一貫して拒否してきた経緯がある。

ドイツがその主用な武器システムを紛争地へ供与する場合、他の欧州諸国とは異なり、国内外で議論が常に飛び出してくる。たとえば、ドイツの主用攻撃型戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与問題の時もそうだった。「レオパルト2」の供与を躊躇するドイツに対し、欧米諸国から圧力が強まった。最終的にはショルツ首相がバイデン米大統領(当時)との協議の末、アメリカとドイツ両政府は2023年1月25日、ウクライナに戦車を供与すると発表した。アメリカは「M1エイブラムス」31台を、ドイツは「レオパルト2」14台をそれぞれ送ることで決着したわけだ。

タウルスの場合、英国とフランス両国と話し合って決めることになる。メルツ氏がロシアとディールするトランプ米大統領とタウルス問題で協議するか否かは不確かだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年4月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。