40代以降、サラリーマンとして大きく飛躍する確率は、実はあまり高くない。これはデータにも裏打ちされている。

一般的に、昇進や転職で大きな年収アップが期待できるのは、30代までが中心だ。40代になると企業側は即戦力としての経験を重視するが、それに応えられるポストや機会は限られてくる。

また、若手への教育やマネジメントを求められる一方で、実際に課長になれる日本人は3割に留まる。

つまり、あくまでサラリーマンのキャリアにおいて「東京での勝負は40代で見切りをつける」という見方は、一定の妥当性を持つ。むしろ、30代のうちにある程度の手応えがなければ、まだ高値で売れる内に「損切り」の検討に入るべきだろう。

ビジネスの世界でも、株式投資の世界でも、撤退のタイミングを誤った者が最も大きな損失を出すのだ。

地方移住は“敗北”ではない

「実家に帰る」=「負け」と捉える必要はまったくない。むしろ今や、地方移住は一つの戦略であり、合理的な生存戦術ですらあるだろう。

コロナ以降、リモートワークが浸透し、地方からでも仕事ができるようになった。特に、ITスキルやWebマーケティング、ライティング、デザインなど、“東京で磨いたスキル”を地方で活かすというライフスタイルは現実味を帯びてくる。

筆者は30代なかばまで大阪、東京とずっと都市圏で生活をしてきたが、脱サラ、独立に際して人生初の熊本県の田舎へ移住した。生活費は驚くほど安く、家も広いし食材の質も高い。「都会から来た人に冷たい」「田舎は閉鎖的」という印象も杞憂に終わった。特に育児をする上では自分にとって田舎の方が向いていたという感覚が強くあるので、「都落ち」はまったく敗北ではないと思っている。

早めの損切りが人生を変える

人生において、「損切り」という言葉はネガティブに聞こえるかもしれない。だが、戦略的撤退はむしろ勇気ある判断だ。

もし30代半ばで、「年収は横ばい」「上昇の兆しが見えない」「生活は苦しい」という状況の人なら、一度立ち止まってほしい。その場所にしがみついても、数年後に状況が劇的に改善する保証はない。むしろ、年齢が上がるほど身動きは取りづらくなる。