危険な戦闘行為は、知らぬ間に脳を蝕んでしまうようです。
米ハーバード大学医学大学院(HMS)は最近、アメリカの特殊作戦部隊の兵士たちの脳に、一般人では見られない“ある異常”が現れていることを発見しました。
驚くべきことに、その異常は通常のMRI検査ではまったく見えません。
しかしながら最先端の脳画像技術を駆使した結果、脳内の通信網ともいえる「機能的結合性」が著しく低下していることが判明したのです。
そして脳の変化は、ちゃんと兵士たちのメンタル異常としても表れていました。
研究の詳細は2025年4月1日付で科学雑誌『Radiology』に掲載されています。
目次
- 普通のMRIでは「異常なし」だが
- エリート兵士の脳に起きていた異変
普通のMRIでは「異常なし」だが

爆発物の処理や危険な作戦に従事するエリート兵士たちは、強烈な爆風に頻繁にさらされる過酷な環境に身を置いています。
一般的には、頭部に目立った外傷がなければ「脳は無事」とされることが多いですが、今回の研究はその常識に一石を投じました。
研究対象となったのは、爆風を繰り返し受けた経験を持つアメリカの特殊作戦部隊員212人(退役兵を含む)です。
彼らは全員、標準的なMRI検査では「脳に異常なし」と診断されていました。
それでも実際には多くの兵士たちが「集中できない」「記憶が曖昧」「気分が不安定」「イライラしやすい」といった神経心理的な問題を訴えていたのです。
こうした症状の背景には何が隠されているのか?
従来の研究では、軽度な脳外傷は画像では検出困難とされてきましたが、2020年代に入ってからはfMRI(磁気共鳴機能画像法)やPET(ポジトロン断層法)などの先端技術で“見えない損傷”が徐々に明らかになりつつあります。
今回の研究も、まさにこの「見えない異常」に焦点を当てたものです。