とくに「殺人予測」というセンセーショナルなテーマであれば、成果が多少なりとも期待できると判断されれば、早期に司法や警察の実務に反映される可能性が高まるでしょう。
このとき問題となるのは、どのような法的枠組みや統制のもとで運用されるのか、国民に対してどれだけ透明性が保たれるのか、そして予測結果が誤っていた場合の救済措置がどれだけ整備されるのか、といった点です。
アルゴリズムは社会に影響力を与える一方で、間違いを犯すこともあります。
誤判定された個人が被る不利益をどこまで是正できるのか──その部分が明確に設計されていなければ、大きな混乱や不当な権力行使につながりかねません。
このように、殺人予測プロジェクトには一見「犯罪を減らす」ための革新的アプローチという魅力がありますが、その裏にはデータの取り扱いに対するプライバシーの懸念や、差別が増幅しかねないバイアスの問題など、深刻な課題が潜んでいます。
さらに、技術的・法的整備が不十分な段階での“予防的ポリシング”は、冤罪や不当な監視を招き、人々の基本的な権利を損なう危険性さえ秘めています。
結局、どれほど画期的なテクノロジーであっても、それをどう使うかという運用の枠組みがしっかりしていなければ、有害な結果をもたらす可能性は高まってしまうのです。
次の段階としては、こうした倫理的・社会的問題に対して十分な議論が行われ、適切なルールづくりや監督機関の設立などが求められるでしょう。
社会が技術を受け入れていく際には、メリットだけでなく大きなリスクを直視し、慎重に扱う姿勢が欠かせません。
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参考文献
UK: Ministry of Justice secretly developing ‘murder prediction’ system
https://www.statewatch.org/news/2025/april/uk-ministry-of-justice-secretly-developing-murder-prediction-system/