■合鍵の「本人確認ができない」理由

ここまでの内容を読み、多くの読者が「そんな簡単に合鍵が作れてしまって良いのか?」と、疑問に感じたことだろう。記者も同様である。

身分証などによる「本人確認」を駆使すれば、こうした犯罪を防げる気もするのだが…日本ロックセキュリティ協同組合は「カギの持ち主、つまり建物の所有者である確認は事実上、業界ではできません」とキッパリ否定。

その理由について「もし、そのような確認が必要になるとすれば、建物が引き渡された後に所有者がその鍵番号を登記する必要があります。しかし万が一、その情報が漏えいしてしまうと重大な危機に直結し、あまりに危険度が高いため、誰もその管理ができないのです」と説明している。

現代は、様々な個人情報をもデータで管理する超情報化社会。だが、そんな現代にあっても、居住所の安全に直結する鍵番号は情報化による管理ができない存在なのだ。

「知られないこと」が犯罪抑止に直結するため、カギおよびドアロックを取り扱う販売店・メーカーにも、建物所有者の情報は一切知らされないという徹底ぶりである。

言うなれば、合鍵の製作を含むこの世の仕組みは「自宅の鍵番号を絶対に他人に知られないこと」を前提として回っていると考えても、決して大袈裟ではないだろう。

こうした事情を踏まえ、同組合は「合鍵注文を受けた際に必要に応じ、業界で行っている本人確認とは、その注文者が身分を偽っていないか、不審な点が見当たらないか程度の確認にすぎません」と、断言していた。