こんな状況で、国民民主党は消費税の5%への減税を政府に申し入れた。今は完全雇用で消費者物価上昇率は3.7%、需給ギャップはプラスなので、これは景気対策ではなく間近に迫った参議院選挙対策である。

いま日本が消費税を減税して毎年13兆円も財政赤字を増やしたら、日本国債に海外ファンドの空売りが殺到するだろう。日銀がそれに買い向かうと大量のマネーが市場に出て、インフレが加速する。

そして最大の問題は、日本国債を大量に保有している地方銀行に大きな評価損が出ることだ。1997年の山一証券倒産の後のように取り付けが起こり、全面的な金融危機になる。

あのときは担保が不動産だったから、長信銀がつぶれて100兆円をドブに捨てる程度ですんだが、今度の不良債権は国債である。日本政府は統合政府でみても約700兆円の債務超過だが、国債が消化できるのは政府の信認が強いからだ。

その信認がゆらぐと国債バブルが崩壊し、金利が上がる。国債を日銀が引き受けると大量のマネーが市中に出て、物価と金利がスパイラル状に上がる。インフレが5%になると年26兆円(消費税10%分)のインフレ税がかかり、5%の消費減税なんか吹っ飛んでしまう。

こんな状況で目先の票ほしさに財政赤字を増やせと要求する国民民主党は、アメリカの金融危機を輸入して日本を第三世界に堕落させる減税ポピュリストである。