研究チームは今回、トゥルク大学の学生50名を対象に、以下のような実験を行いました。
まず、参加者には負荷の高い計算問題に取り組んでもらい、意図的にストレスを与えます。
その後、参加者は「自然に関連する単語(森、花、湖など)」と「都市に関連する単語(バイク、バー、交差点など)」をそれぞれ5分間聞きながら、それぞれの情景を頭の中で思い描くよう指示されました。
研究チームは、主観的な回復感の自己評価に加えて、心拍数・心拍変動・皮膚電気活動といった生理的な反応も測定しました。
その結果、自然のイメージを思い描いた後の方が、都市のイメージよりも明らかに「心身ともにリラックスしている」ことが示されました。
たとえば、心拍数は自然イメージ中に下がり、副交感神経の働きが高まって、身体がリラックス状態にあることが示されました。
さらに皮膚電気活動の指標でも、自然イメージの方が強く反応しており、ポジティブな感情的覚醒が促されたと考えられます。

それと同時に、この効果は「自然が好き」という個人の好みにより強く影響されていました。
つまり普段から自然に対して親しみを感じている人ほど、自然にそれほど関心がない人に比べて、想像による癒し効果が強かったのです。
興味深いのは、これらの効果が「実際の自然体験なし」で得られたという点です。
これは自然へのアクセスが難しい人にとって大きな意味を持ちます。
たとえば入院中の患者や都市部で暮らす人々にとって、「自然を思い描く」だけでも心のケアにつながる可能性があるのです。
今回の研究は、従来の「自然に行くことが必要」という前提をくつがえす、興味深い一歩となりました。
皆さんが仕事や私生活に疲れたときは、少し目を閉じて、森の中の小道を思い描いてみてはいかがでしょうか。
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参考文献
No park? No problem. Just imagining nature can ease your stress
https://www.psypost.org/no-park-no-problem-just-imagining-nature-can-ease-your-stress/