まるでSF映画の世界から飛び出してきたかのような、手で触れて操作できる3Dホログラムが現実のものとなった。複合現実(MR)技術における画期的な進歩によって、私たちが想像していたよりも早く、未来のディスプレイが登場したのである。
この驚くべき研究成果は、オープンアクセスのリポジトリ「HAL」に2024年3月6日付で公開された論文で詳しく述べられている。科学者たちは、「ボリュメトリックディスプレイ(volumetric displays)」と呼ばれる立体映像表示装置の重要な構成要素として、弾力性のある素材を用いることで、3Dホログラムを掴んだり、突いたりすることが可能になる方法を探求した。
この革新によって、例えば仮想の立方体を手で掴んで動かすといった、ホログラムシステムを損傷させることなく3Dグラフィックスを物理的に操作することが可能になったのだ。研究はまだ査読(専門家による審査)を経ていない段階だが、研究チームはその成果を実証する動画も公開している。
「柔らかさ」が鍵! 新技術の仕組みとは
これまでも、公共の展示やスマートグラスの中心技術としてホログラムは存在したが、それに物理的に触れるというのは、マーベル映画『アイアンマン』のようなSFの世界の話だった。今回の研究は、空中に浮かぶ3Dグラフィックスを人間の手で操作できる初めての事例となる。しかし、これを実現するためには、ホログラムがどのように機能するのか、その根本原理に立ち返る必要があった。
ボリュメトリックディスプレイの中心には「ディフューザー」と呼ばれる部品がある。これは通常、硬いシート状の素材で、高速で振動しながら、異なる高さに同期して投影される何千もの画像を映し出し、3Dグラフィックス(ホログラム)を形成する役割を担う。しかし、この振動するシートが硬いため、振動中に人間の手が触れると破損したり、怪我をしたりする可能性があった。
研究チームが見つけた解決策は、この振動するシートに柔軟な素材(具体的な素材名はまだ明かされていない)を使用することだった。これにより、シートを傷つけたり、映像の質を損なったりすることなく、ホログラムに触れることが可能になったのだ。さらに、触れた際に弾性素材が変形してしまうという課題もあったが、研究チームは映像を正しく投影するための画像補正技術を導入することで、この問題も克服したのである。
