私たちの世界では、時間の矢は常に一方に流れているため、未来人でもない限り、未来の情報を使って過去で儲けることはできません。
しかし量子の世界では、時間は思ったほど頑固ではありません。
量子の世界でも「原因と結果」を繋げる因果律は存在しますが、原因と結果の関係は私たちが知る常識とは異なり曖昧です。
量子の世界では原因が結果を導くだけでなく、結果が原因に干渉するかのような、奇妙な挙動が見られる場合があるのです。
その代表的な現象が「量子もつれ」です。
現実世界の男女カップルのそれぞれが東京と大阪にランダムに配置されるとき、東京にいるのが男性ならば、大阪にいるのは女性であることが確定します。
男女のどちらが東京にいるかは、観測されようとされまいと既に決まっており、観測はそれを確定させる手段に過ぎません。
しかし両者の間で量子もつれが起こると、状況は大きく変わります。
観測が行われる前の段階では、男性あるいは女性がどちらにいるかの情報は、まだ確定していません。
観測が行われてはじめて、東京にいるのが男性という情報が生成され、その影響は瞬時に伝達(テレポート)されて「大阪にいるのは女性」という情報が生成されます。
「観測されるまで情報が存在しない」というと奇妙に思えるでしょう。
実際、アインシュタインのような天才物理学者も、かつてはこの考えにどうしても賛同できなかったことが知られています。
しかし多くの実験が行われた結果、本当であることが判明し、証明に携わった研究者たちはノーベル物理学賞を受賞しました。
ですが量子もつれの奇妙さはこれだけではありません。
量子もつれには時間軸においても常識外れの現象、すなわちタイムトラベルを思わせる挙動が知られているからです。
未来の観測結果が過去の観測結果を変えてしまう
