●この記事のポイント
・アドビは、同社独自の生成AIである「Firefly」によって「マーケティングキャンペーンを構築する時間が10倍速くなった」と説明。
・プロンプトに自分が行いたいキャンペーンの内容を入力すると、それに合わせた施策が作られ、どのような広告コンテンツを作るべきかが指示される。
・同じコストの中でより多くのプランを実行できて「キャンペーン成功の確率を上げられる」というのがアドビの狙い。

 アドビは3月18~20日に米ラスベガスで開催したデジタルマーケティング関連のイベント「Adobe Summit 2025」内で、同社独自の生成AIである「Firefly」によって「マーケティングキャンペーンを構築する時間が10倍速くなった」と説明した。アドビといえば「Photoshop」のようなクリエイティブツールを思い浮かべる人が多いだろうが、マーケティングのためのツール群を企業に向けて提供することを、もう1つのビジネスの柱にしている。「構築速度10倍」とはどういうことなのか。イベントの取材をもとに解説してみよう。

パーソナライズで広告コンテンツが劇的に増える

 デジタルマーケティングとは、我々が普段目にするウェブやアプリ上の広告、ダイレクトメールなどの「デジタル上で目にする広告キャンペーン」全体を使い、商品やサービスのマーケティングを行うことを指す。いまやあたりまえのものだが、現在特に課題となっているのはその「効率」だ。ウェブとメールしかなかった時代はシンプルだった。広告のバリエーションといっても、バナー広告のサイズが違うくらいのものだ。

 だが、現在はまったく違う。バナー広告のバリエーションは増え、見ているソーシャルメディアは層によって違う。広告を見ている場所や時間帯によって、同じ商品でも消費者の受け止め方は異なるものだ。だからこそ、マーケティングキャンペーンを効率化していくには、「人や場所や時間を選んで広告コンテンツを大量に作り、効率的に出していく」必要がある。

 今、デジタルマーケティングが抱えているのは、「広告価値を最大化するために、大量のコンテンツを作る」ことであり、さらには「それを管理し、適切なマーケティングプランを構築する」ことでもある。多数の広告コンテンツを作るといっても、ゼロからまったく違うものを用意するものばかりではない。同じ素材・同じ広告コピーで縦横比を変えるだけで済む場合もある。以下は、アドビが自社イベント向けにコンテンツのバリエーションを増やしている様子だが、ソーシャルメディアの種類によって縦横比などが違うのが分かるだろう。



アドビの生成AI、マーケ・キャンペーンの構築時間を10倍・高速化に成功
(画像=アドビがキャンペーンに使うコンテンツの例。SNSによって見せ方は変わる、『Business Journal』より 引用)

 だが、動画広告をメディアごとに出し分けるために縦横比や広告コピーを変える、となると相当な手間が掛かる。広告が出る地域に合わせて内容を変える場合にはさらに手間が掛かる。どれも、コンテンツを作るクリエイターから見れば、そこまで難しい話ではないが、従来に比べ数倍の量が必須になるので、すべてをクリエイターが作業するのは難しくなる。

 そこで出てくるのが生成AIだ。アドビは独自の生成AIである「Firefly」を提供中だ。ゼロからAIに作ってもらうのではなく、素材を元に、企業が求めるトーンやルールにあわせて広告素材のバリエーションを増やしていくことになる。また、その際にはクリエイター向けのコアなツールだけでなく、よりシンプルに作業ができるツールも必要になる。