しかし、ドイツのメディアではCDU/CSUとSPDの連立協定への評価は厳しい。南ドイツ新聞(SZ)は「進歩のための連立政権というより、維持を望む同盟」と評している。「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」(FAZ)紙も「方向転換に十分か」と懐疑的に報じている。シュピーゲル誌は「大きな進展は見られなかった。新たな連立政権のパートナーたちは予算、税、財政のセクションで力強い言葉を惜しみなく使ったが、約束された措置が実際の経済回復に十分であるかどうかは疑問が残る」と述べている。

連立交渉で最大の争点は移民・難民政策jと税制だった。移民問題では不法移民の国外追放や国境管理の強化などで両党はほぼ合意していたが、その文章化で強硬政策のイメージ緩和を願うSPDの抵抗があった。明確な点は、迅速な強制送還、自主入国プログラムの終了、そして家族再統合の停止などが強行されることになる。

経済専門家は、米国の関税により、輸出志向のドイツ経済に新たな景気後退リスクと問題が生じると見ている。次期首相候補のメルツ氏は、法人税の引き下げ、官僚機構の縮小、エネルギー価格の引き下げで対抗したいと考えている。ただし、トランプ米大統領は予測不可能であり、関税やロシアのウクライナ侵略戦争など、世界の政治と経済の不確実性は高まっている。

シュピーゲル誌によると、CDU/CSUとSPDは成長促進のため「投資促進」を約束しているが、設備投資に対する減価償却は年間30%、3年に限定される。法人税(資本会社の利益税)は直ぐ引き下げられず、2028年1月1日から実施されることになっている。企業は現在、救済を必要としているが、政府のプログラムにはドイツへの投資に対する新たなインセンティブはない。中小所得者に対する所得税の減税は早くても2027年からだ、といった具合いだ。

CDU/CSUとSPDの連立交渉は、巨額の防衛財源を確保する基本法改正の採択を受けてから始まった。連立協定には「ドイツ軍が中核的な役割を果たす」と記述されている。欧州の自主防衛力の強化を要求するトランプ米大統領への対応だ。