独週刊誌シュピーゲルは保守派同盟「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)と中道左派「社会民主党」(SPD)が10日公表した連立協定(144頁)について、「ドイツにとって中道派の最後のチャンスかもしれない」と評している。同論調には、CDU・CSUとSPDの両党の連立政権が成果を挙げられない場合、右翼政党「ドイツのための選択肢」(AfD)がそれに代わって政権を掌握する可能性が出てくるというニュアンスが含まれている。オーストリアの代表紙「プレッセ」も「メルツ氏は結果を出さなければならない。AfDがメルツ氏の首根っこをつかんでいる。今回がドイツにおける中道派にとって最後のチャンスだ」と報じている。

連立協定の合意内容を発表するメルツ首相ら 同首相インスタグラムより
ドイツ民間放送ニュース専門局NTVが4月1日で公表したドイツの政情バロメーターによると、CDU/CSUが25%で第1党、それを追ってAfDが24%だ。その差は1%と緊迫してきている。今年2月23日の連邦議会選挙で28.5%の得票率を獲得して第1党となったCDU・CSUは現時点で支持率25%と3・5%減少した一方、総選挙で20.8%だったAfDは現在24%と逆に3.2%増加している。だから、AfDがドイツの政界で第1党に躍り出るのはもはや時間の問題と見られているのだ。その政情の動向を踏まえ、シュピーゲル誌はCDU/CSUとSPDの連立政権がAfDの躍進を阻止できる最後のチャンスとなる、といった表現となったわけだ。AfD政権が誕生するという警告が含まれているわけだ。
連立交渉の合意が総選挙後45日目で達成されるなど、記録的な速さで成立した背景には、ウクライナ戦争、国民経済の低迷に加え、トランプ米政権の関税政策による波乱など、ドイツを取り巻く外交、経済的な圧力は日増しに高まり、連立交渉で多くの時間を費やす余裕がなくなってきた、といった思いがCDU/CSUとSPDの両党指導者に共有されていたからだろう。