「徹頭徹尾、自分のためだけに生きる」とは、自分の価値観や感情を最優先し、他者からの評価や承認に依存しない姿勢である。恋人や友人、ペットとの関係すら断ち、あらゆる人間関係を排除して幸せでいられるという状態に近い。極端に言えば、「無人島で自給自足の生活をして幸せになれる自信があるか」という問いと等しい。
しかし、これは非常に難しい。なぜなら、人間は他者とのつながりの中で自己を認識し、価値を感じる生き物だからである。「気楽だから誰とも関わりたくない」という人ですら、SNSなどでその思いを発信し、誰かの共感や反応を求めていることが何よりの状況証拠だろう。
周囲の期待に応えたい、誰かに好かれたい、困っている人を助けて喜んでもらいたい、認められたい――こうした欲求を完全に消し去ることは極めて難しく、それを上回るような情熱や信念を持ち続けられる人は、歴史に名を残すような一部の天才に限られるように思える。
したがって、自分軸で生きるには、他人の視線や評価に左右されない精神的自立、そして深い自己理解が必要不可欠である。それは一朝一夕に身につくものではなく、孤独や葛藤を伴う長いプロセスを経るものである。
王道からは逃れられない
筆者は幼少期から兄弟とばかり遊び、常に一匹狼として振る舞っていた。しかし、今はまったく異なる生活を送っている。
家族を持ち、顧客や取引先と真剣にコミュニケーションを取り、YouTubeや記事で情報を発信し、イベントや交流会にも積極的に参加している。かつて「自分は一人で強く生きていく」と鼻息荒く語っていたが、気づけば人との関わりの中で生きている。それも、極めて前向きに。
そして思うのは、「人のために生きる」というのが、最も確実で、飽きのこない幸福の形だということである。
一人で高級料理を食べ、高級ホテルでラグジュアリーな時間を過ごすよりも、子どもとフードコートで笑い合い、信頼できる顧客や友人と居酒屋で語らう時間の方が、はるかに楽しい。「あなたは素晴らしい」と誰かから褒められるより、その言葉を誰かに伝えて喜ぶ顔を見た方が幸せなのである。