ドイツの保守政党同盟「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU))と社会民主党(SPD)は9日、3月13日から続けられてきた連立交渉がまとまったことを発表する記者会見を開いた。フリードリヒ・メルツ氏(CDU)、CSU党首マルクス・ゼーダー氏、SPD党首のサスキア・エスケン氏とラース・クリングバイル氏は新たな連立協定を国民に発表した。連立協定では移民政策の強化、弱体化した経済の活性化などが掲げられている。

連立協定の合意内容を発表するメルツ首相(中央)ら 同首相インスタグラムより

先ず、CDUのメルツ党首は連立協定が合意できたことに社民党に感謝を表明し、「この連立協定はドイツ国民と欧州連合(EU)への力強いシグナルとなる。ドイツは行動力のある政府を得るだろう」と語り、連邦議会選挙(2月23日実施)から45日目、ドイツで新しい政権が誕生する運びとなったと報告した。メルツ氏は将来の連立政権について、「改革と投資によってドイツの安定を維持し、経済的に再び強くなるだろう。欧州もドイツを頼りにすることができるだろう」と語った

CDUの姉妹政党、CSUのゼーダー党首は「連立協定をまとめることは容易な作業ではなかった。協定の各一行をまとめるために政治的な判断が不可欠だった。ピュア・ポリティカルだ」と説明し、ドイツが直面している現状が如何に厳しいかを端的に述べていたのが印象的だった。例えば、ドイツの国民経済は過去2年間、リセッションだ。このままいくと3年目もリセッションが避けられないという。ゼーダー氏は「連立協定はわが国のリハビリテーションと健康プログラムを混ぜ合わせたものだ」と表現している。

社民党のクリングバイル党首(次期財務相兼副首相候補)は「私が生まれ成長したドイツは平和であり、豊かであり、未来への希望が溢れていたが、それ等は現在失われている」と指摘し、ドイツを含む欧州、世界が激動の時に突入しているという認識を吐露した。同じ社民党のショルツ首相(当時)が2021年12月、「緑の党」と「自由民主党」(FDP)との3党連立政権(信号機政権)を発足した直後、「私たちは現在、時代の大転換に直面している」と表明し、Zeitwendeという独語が政治の世界で流行語となったことを思い出す。クリングバイル氏は「スタートポジションは難しかったが、結果は素晴らしい」と強調することを忘れなかった。