そこで研究チームが新たに導入を考えているのが、全天赤外線カメラシステム「Dalek(ダーレク)」です。

この取り組みには「誰の目にも開かれている空を、全天候・全時間帯で、しかも赤外線という目に見えない領域で観測し続ければ、正体不明の飛行物体を科学的に検出できるかもしれない」―そんな期待が込められています。

実際にチームはDalekを使ったテスト運用を開始しており、すでに正体不明の飛行物体を確認しているのです。

正体不明の飛行現象を確認!

研究チームが開発した装置「Dalek(ダーレク)」は、全天型の赤外線カメラアレイです。

これは8台の赤外線カメラをドーム型に配置し、全天を隙間なく見張ることができる観測システムです。

赤外線によって、人の目には見えない熱源―たとえば、夜間に飛行する航空機やドローン、鳥類、そして可能性としての未確認飛行物体―を検出することを可能にします。

また、人工知能(AI)による画像解析技術も取り入れられており、「YOLOv5(You Only Look Once)」という物体認識モデルと、「SORT(Simple Online and Realtime Tracking)」という追跡アルゴリズムを用いて、動く物体の軌道を正確に再構成します。

画像
8台のカメラで地球の全天を監視/ Credit: Laura Domine et al., journal Sensors(2025)

Dalekは米マサチューセッツ州の開発拠点に設置され、2023年末から5カ月にわたってテスト運用されました。

その間に記録された空の映像からは、約50万件もの飛行物体の軌道が再構成され、そのうち約8万件が「異常」と判定されました。

さらに手動で解析された結果、144件の軌道が「分類不能」、つまり現時点では正体が断定できないものとして残されたのです。

この数は決して「宇宙人が来た証拠」ではありませんが、これまでにないスケールで「空に何が飛んでいるのか」を明らかにしつつある成果といえるでしょう。