国民民主党はきょう政府に対して、消費税の一律5%への減税を要請した。政府の検討している給付金も減税もバラマキという点では同じなのだが、なぜか給付は悪で減税は善と思い込んでいる人が多い。初歩的な常識を確認しておこう。

総需要を増やすのは歳出ではなく「財政赤字」

大学1年でだれでも習うケインズ理論では、GDPをY、消費をC、投資をI、歳出をG、純輸出をXとすると、支出面からみると

Y=C+I+G+X・・・(1)

これを所得面からみると、貯蓄をS、税をTとして

Y=C+S+T・・・(2)

(1)と(2)よりISバランスは

S-I=(G-T)+X

つまり総需要を拡大する政府支出は、歳出から税収を引いた財政赤字(G-T)である。歳出が100兆円で税収も100兆円なら財政赤字はゼロなので民間の経済活動に中立だが、歳出が110兆円になったら財政赤字が増え、総需要が10兆円以上増える(乗数効果)。

他方、税収を90兆円に減らしても(貯蓄を除いて)財政赤字(G-T)は10兆円増える。財政バラマキも減税も同じなのだ。左辺(S-I)がゼロなら政府は中立が望ましいが、日本では左辺が恒常的にプラスなので、この投資不足を財政赤字で埋めている。

財政赤字を先送りすると将来の負担は大きくなる

要するに給付金も減税も財政赤字によるバラマキという点では同じなのだ。財源の裏づけがない限り、減税の赤字は国債発行で埋めるしかなく、それは子の世代の増税で返済するしかない。

最近まではゼロ金利だったので、将来の負担は今と変わらなかったが、今は長期金利が上がってきたので、たとえば国債に2%の金利がつくと、毎年20兆円以上の負担増になる。これは消費税8%分である。子の世代がそれを孫の世代に先送りするネズミ講(ポンジ・スキーム)は、いつまでも続けられない。