枢機卿はローマ・カトリック教会ではペテロの後継者ローマ教皇に次いで最高位の聖職者だ。世界で約14億人の信者を抱える最大のキリスト教派、ローマ・カトリック教会には昨年12月現在、253人の枢機卿がいる。次期教皇選出会(コンクラーベ)に参加できる80歳未満の枢機卿は140人だ。

フランシスコ教皇は今年に入り、肺炎を患い2月14日から1カ月以上ローマの病院に入院していた。イタリアのメディアではフランシスコ教皇の生前退位が表明されるのではないか、といった憶測が流れた。現教皇が退位した場合、即コンクラーベが開催されて次期教皇が選出される運びとなる。すなわち、80未満の現枢機卿は次期教皇の候補者でもあるわけだ。その高位聖職者の枢機卿に未成年者への性的虐待疑惑が飛び出したり、隠蔽の容疑を受ける枢機卿が出てきているわけだ。

米教会のマッカーリック枢機卿(元ワシントン大司教)は2019年、未成年者への性的虐待で聖職を解任されている。また、不動産投資などに絡み横領の罪に問われたアンジェロ・ベッチウ枢機卿は2020年9月24日、突然辞任を表明し、フランシスコ教皇はその辞任申し出を受理した。バチカンで権勢を誇った両枢機卿の解任、辞任劇は当時、大きな話題を呼んだ。看過できない事実は、両枢機卿ともフランシスコ教皇の友人サークルに入る聖職者だったことだ。枢機卿はローマ教皇から任命されるので、通常の会社、組織ならば、教皇に任命責任が問われるケースだろう。

ちなみに、高名な神学者、オーストリアのパウル・ツーレーナ氏は昨年12月、同国のカトリック系週刊紙「ディ・フルへ」とのインタビューの中で「コンクラーベを廃止すべきだ」と発言して物議を醸した。ジャーナリズム的に表現すれば、‘爆弾発言’だ。同氏は「コンクラーベは中世の遺物」と言い切っている。そのうえで、各国の司教会議を中心としたシノドス的な教会改革を提案しているのだ。同氏は言及しなかったが、教皇候補者である枢機卿たちの体たらくがコンクラーベ廃止論の背景となっているのはないか。