私たちが普段「ここに物体がある」「あそこまで歩くのに何メートルかかる」などと当たり前に使っている「空間」という概念。

実はこれが、“最初から”存在しているわけではなく、「時間的な観測の連続性」から結果として生まれているかもしれない――それを示唆するのが、本研究の最大のポイントです。

たとえば、私たちは「時間」と聞くと、「時計が秒針を刻んでいる」「過去から未来へ流れ続ける何か」とイメージします。

一方で「空間」といえば、「部屋の広さ」や「宇宙のどこかにある星」のように、何かを『配置する舞台』として思い浮かべるでしょう。

ところが本研究では、この“舞台”であるはずの空間が、むしろ「時間軸に沿った量子ビットの測定相関」を積み重ねることで、あとから“浮かび上がってくる”というアイデアを提示しているのです。

この結果は、直感に大きく反します。

なぜなら、私たちは普通「空間に量子ビットを置いて、それを測定する」と考えるからです。しかし本研究は

「空間は最初からないかもしれない。あるのは“時間ごとの測定”という行為だけ。それを積み上げて解析すれば、結果的に空間の幾何学がそこから復元される」

という見通しを打ち出しています。

それはまるで、“真っ暗な部屋の中”でいろんなタイミングで手を伸ばして壁を探っているうちに、「あ、壁はこういう形をしていて、天井はこの高さなんだな」と分かってくるようなイメージです。

はじめから照明がついている(=空間が与えられている)のではなく、暗闇で手探りしながら時間的に蓄積した情報から、部屋の三次元構造が明らかになるのと似ています。

ただ「重力やエネルギー分布を考慮しなくてはならない現実の宇宙」にもこれがそのまま適用できるかどうか、まだ不透明な部分が多いのも事実です。

微視的な量子ビットで観測された結果を宇宙全体に適応させるには、多くの手続きが必要です。

加えて私たちの世界は、アインシュタインの相対性理論によって、時間と空間を不可分のものとして扱う「時空」のイメージが強固に根付いています。